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2010/08/24 歳出・税制及び執行に関する意見・要望(2010年度版)

2010年8月2日
税制委員長 伊藤 紀幸

税制委員会では、委員会総意のもと、今年度の横浜中間税会の意見・要望の草稿(案)を別紙のとおり提出し、局間連でも幾つか取り上げて頂きました。
次年度以降も各位ご協力賜りますよう、御願い申し上げます。



歳出・税制及び執行に関する意見・要望案

歳出・税制 執行の区分 意見・要望・理由
歳出(前提) ・サブプライム問題・リーマンブラザーズ破綻以降、世界同時不況に陥り、国内経済も未だ不況感を脱し切れていないのが庶民感情である。欧米諸国のように思い切った減税等により景気浮揚効果を早急に願いたい。

・衆院・参院の政治的なねじれ現象を起因に税制改正動向が不確実性を帯びているが、先ずは税制改正を選挙のタイミングや政争の具に使わないでほしい。
・先例をたどれば、与党から税制改正大綱等が記載されることにより、事実上税制改正が決定するのではなく、具体的な議論を事前に開示し、広く知らせ意見も求めてから決定してほしい。他の法律と同様にパブリックコメントの制度を導入できないだろうか。

・小泉内閣以来、相当多くの歳出カットの努力が伝えられたが、我が国財政は債務残高対GDP比が主要先進国の概ね2〜3倍の約150%と危機的な状況にあり、未だに多大な財政赤字を抱えている。これを将来の少子高齢化の進む国民が年金や医療費も含めて、何らかの方法で負担しなければならない。

・日本の国土のほぼ4分の1は国有地であり、その中には都心部や高級住宅地の中に10年以上も未利用地もあり、非効率な利用例も数多く見受ける。利用しないものは払い下げ、非効率なものは合同庁舎にまとめて残りは払い下げるべきである。

・昨今の社会保険庁、農林水産省、防衛省を初めとした民間の世間常識ではとても考えられない不手際が続く中で、とてもまだ今すぐの増税に応じ兼ねない。

・また、民主党政権になってから始まった「事業仕分け」で国民の前に数多の無駄・削減すべき歳出や依然として継続している天下りコスト等が公然になったことは一定の評価に値するが、道半ばであり、増税の前にすべきことは沢山あるのではないだろうか。

・昨年のドバイショックやギリシャ・ポルトガルの信用不安など世界経済の不透明感が増す現環境下、国民の負担増の前に、より一層の聖域なき行政改革、社会保障、公共事業、地方財政の歳出の削減を長期にわたり断行する必要がある。
税制改革 ・大手銀行がかつて、不良債権処理の為に公的資金として国から各行に2000億円から4000億円を無利息で借りた結果、不良債権も極端に減り公的資金も大半の銀行が完済し、過去最高の業務純益を計上している。それにも拘わらず過去数年間に亘り、法人税等も殆ど支払らわれてこなかった。

・一方、IFRS(国際財務報告基準)を背景に、2010年3月31日の決算を迎える企業から、順次、賃貸等不動産の時価開示が適用されることとなったが、あくまでも、取得原価主義に基づく脚注表示に留まっており、中小企業は未だ所有する不動産をはじめ固定資産の価値が低下しても、減損会計の損金算入が認められず、不良資産を抱えたまま納税をしいられている。保有不動産に減損が生じた場合は損金参入を認めてほしい。(固定資産税も含めて)

・景気浮揚のためにも、中小企業等基盤強化税制等をより一層充実して欲しい
(1)消費税 ・公平、安定、簡素な税制改革を考えると消費税が議論となるが、消費税率は安易に上げるべきでなく、次の原則は維持すべきである。
  (a)単一税率。公平、安定、簡素の原則からも単一税率をまずは維持すべきである。
     低所得者層への配慮は別途検討すべきである。
  (b)仕入税額控除の仕組みは請求所保存方式を維持すべきである。
     納税義務者も激増するので、成るべく単純に手間を省くべきである。
  (c)どうしても消費税を上げざる得ない場合は長い時間をかけて、
     例えば5年毎に1%〜2%ずつ上げて
     景気や消費マインドにマイナス効果が出ないよう最大限配慮すべきである。
(2)印紙税 ・印紙税については常に全員から意見がでる。ペーパーレス時代にしかも消費税の課税対象取引に課税され不公平、不合理である。見直し又は廃止してほしい。
(3)法人税 ・スイスの有力ビジネススクールのIMD(経営開発国際研究所)が19日発表した「2010年世界競争力年鑑」で、日本の総合順位は58カ国・地域で27位、前年の17位から急低下した。中国、韓国、台湾などに抜かれ、02年以来8年ぶりの低位に沈んでいる。国際分業化で特に中小企業に配慮した税率にし、生きがい、やりがいのある税制・国づくりをめざしてほしい。

・消費税率を上げなければならない時は少なくともヨーロッパ並みに法人税、所得税、住民税の率を下げて、国際競争力を上げ、国民の将来に希望と安心が持てる税制を希望する。

・起業に係る税制を全般的に見直し、起業者・出資者・創業直後のアーリーステージの企業群を対象に使い勝手の良い、効果の高い支援・助成を創造して欲しい。

・ 一人オーナー会社課税精度の廃止は評価に値するが、役員賞与の事前届出規定は速やかに廃止して欲しい
(4)所得税
住民税
・諸外国と比べて所得税・住民税ともに高すぎる。特に住民税が高すぎて海外で住む方が激増し、人口の減少に拍車をかける。又、課税最低限の引き下げと最高税率の引き下げを実施して、税負担の公平化を図るべきである。

・歳入減少の厳しい経済環境下であることは承知しているが、年少扶養控除の廃止や特定扶養控除の縮小など、国民生活に圧迫を強いる税制改正は速やかに廃止して欲しい。
(5)相続税 ・中小企業の事業は雇用を生み社会性がある。その事業承継は遺産相続とは別のものとして税率と納税方式を考えてほしい。即ち、地域経済の柱であり、雇用の大半を支える中小企業に対する支援は重要で、特に、事業承継を支援し、中小企業の安定的な活動を支えて欲しい。

・ 相続人がすぐ企業を処分して廃業することは国力をそぐ心配がある。

・その意味において、取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度、及び、贈与税猶予制度の創設は中小企業オーナーにとって事業継続の観点からも資する制度であり歓迎する。
(6)租税特約/その他 ・ わが国においても、貯蓄から投資への移行が囁かれる時代となっている。米国サブプライムローン危機により、投資マネーのクレジットクランチが生じつつある中、わが国にオイルマネーに代表される投資マネーを引き寄せることは喫緊の課題ともいえる。平成18年11月から開始しているUAE政府及びクウェート政府との間の租税条約の早期締結を切望する。
執行 ・ 世の中のIT化が進み、『e-TAX』も普及するはずであり、早期普及のための税務上インセンティブも従来以上に求められる。

・ 更に一歩進めて、国民背番号制も検討課題としてはどうか。毎年、1兆円弱の新規滞納が生じている現状を鑑み、徴税の適正化を図って欲しい。

・国民背番号制によって、国だけでなく地方も年金、社会保障も含めたワンストップ対応が実現できれば、その副次的効果として、社保庁の入力ミスなどのオペレーショナルリスクも回避でき、業務・人件費の効率化は計り知れない。縦割り行政も改める必要がある。