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2011/06/10 歳出・税制及び執行に関する意見・要望


横浜中間税会
会 長 大西 晴之
税制委員長 伊藤 紀幸

歳出・税制及び執行に関する意見・要望案

歳出・税制 執行の区分 意見・要望・理由
歳出(前提)

・衆院・参院の政治的なねじれ現象を起因に税制改正動向が不確実性を
帯びているが、先ずは税制改正を選挙のタイミングや政争の具に使わ
ないでほしい。また、政局に国会開催が利用されるのではなく、東日本大震災や福島第一原発事故など喫緊の課題で本質的な議論を早急にして欲しい。福島原発事故も事故後の経緯を公開し検証する事は大切であるが、国会ではそれよりも今後どういう方針で臨み、世界に情報発信していくのかの議論を優先して頂き、国会開催費用を無駄に使わないで欲しい。

・先例をたどれば、与党から税制改正大綱等が記載されることにより、事実上税制改正が決定するのではなく、具体的な議論を事前に開示し、広く知らせ意見も求めてから決定してほしい。他の法律と同様にパブリックコメントの制度を導入できないだろうか。

・小泉内閣以来、相当多くの歳出カットの努力が伝えられたが、我が国財政は債務残高対GDP比が主要先進国の概ね2〜 3倍の約150%と危機的な状況にあり、未だに多大な財政赤字を抱えている。今回の東日本大震災に伴う復興費用負担
も追い討ちをかけるが、これを将来の少子高齢化の進む国民が年金や医療費も含めて、何らかの方法で負担しなければならない。将来の世代の負担軽減の為にも景気浮揚を第一に税制改革に臨んでほしい。

・日本の国土のほぼ4分の1は国有地であり、その中には都心部や高級住宅地の中に10年以上も未利用地もあり、非効率な利用例も数多く見受ける。利用しないものは払い下げ、非効率なものは合同庁舎にまとめて残りは払い下げるべきである。

・昨今の社会保険庁、農林水産省、防衛省を初めとした民間の世間常識ではとても考えられない不手際が続く中で、とてもまだ今すぐの増税に応じ兼ねない。

・また、民主党政権になってから始まった「事業仕分け」で国民の間に数多の無駄・削減すべき歳出や依然として継続している天下りコスト等が公然になったことは一定の評価に値するが、道半ばであり、増税の前にすべきことは沢山あるのではないだろうか。

・昨年のドバイショックやギリシャ・ポルトガルの信用不安など背か良い経済の不透明感が増し、世界同時不況が発生しやすい現環境下、国民の負担増の前に、より一層の聖域なき行政改革、社会保障、公共事業、地方財政の歳出の削減を長期にわたり断行する必要がある。

税制改革

・公平な税負担を強く求める。中小企業がリーマンショック後、更には、大震災後不況にあえいでいる一方で、大手銀行がかつて、不良債権処理の為に公的資金を国から無利息で借りた結果、不良債権も極端に減り公的資金も大半の銀行が完済し、各行では過去最高の業務純益を計上した現状がある。それにも拘わらず過去数年間に亘り、大手銀行は法人税等も殆ど支払われてこなかった。
また、今回の東京電力の原発問題でも結果的に国民に負担を強いる懸念は十分あり、大企業優遇偏重に陥らぬように、公平な税負担と真の意味でも応能負担原則に基づく税制の構築を切望する。

・一方、IFRS(国際財務報告基準)を背景に、2010年3月31日の決算を迎える企業から、順次、賃貸等不動産の時価開示が適用されることとなったが、あくまでも、取得原価主義に基づく脚注表示に留まっており、中小企業は未だ所有する不動産をはじめ固定資産の価値が低下しても、減損会計の損金参入が認められず、不良資産を抱えたまま納税をしいられている。保有不動産に減損が生じた場合は損金参入を認めて欲しい。(固定資産税も含めて)
・2011年(平成23年)3月11日(金)に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波、及びその後の余震により引き起こされた東日本大震災、更に、地震により発生した福島第一原発事故は、我が国経済に甚大な影響を与えている。本年4月27日には、被災者支援策として、税制面から緊急に対応すべき国税関係の措置として「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」が公布・施行されているが、緊急対応としてのものであり、現行税制を適用した場合の負担軽減等の措置に留まらず、今後、土地利用規制や税制・金融面で優遇する「復興特区制度」の創設や、被災地を支援するためにも企業体力をつけるべく被災地以外の企業にも法人税率の大幅な引き下げを実施するなど、大胆な税制改革を望む。
・大震災や原発問題による風評被害で国内産業の景気低迷も危惧される中、景気浮揚のためにも、中小企業等基盤強化税制等をより一層充実して欲しい

(1)消費税 ・公平、安定、簡素な税制改革を考えると消費税が議論となるが、消費税率は安易に上げるべきではなく、次の原則は維持すべきである。
・(a)単一税率。公平、安定、簡素の原則からも単一税率をまずは維持すべきである。低所得者層への配慮は別途検討すべきである。
・(b)仕入税額控除の仕組みは請求書保存方法を維持すべきである。納税義務者も激増するので、成るべく単純に手間を省くべきである。
・(c)どうしても消費税を上げざる得ない場合は長い時間をかけて、例えば5年ごとに1%〜2%ずつ上げて景気や消費マインドにマイナス効果が出ないよう最大限配慮すべきである。
・復興財源として消費税の利用も検討に値はすると思う。
(2)印紙税 ・印紙税については常に全員から意見がでる。ペーパーレス時代にしかも消費税の課税対象取引に課税され不公平、不合理である。見直し又は廃止してほしい。
(3)法人税 ・スイスの有力ビジネススクールのIMD(経営開発国際研究所)が19日発表した「2011年世界競争力年鑑」で、日本の総合順位は59カ国・地域で26位(201年は27位)、一昨年の17位からここ数年で急低下した。中国、韓国、台湾などに抜かれ、02年以来8年ぶりの低位に
沈んでいる。国際分業化で特に中小企業に配慮した税率にし、生きがい、やりがいのある税制・国づくりをめざしてほしい。
・更に、「2011年世界競争力年鑑」によると、「政府の効率性」は59ヵ国中50位と財政や法人税が弱みとの結果が出ており、我が国の潜在能力からして、より一層の改善が求められる。因みに
、同年鑑によれば、@持続可能性への道筋(財政状況の改善、高齢化対応等)、A法人税改革・制度改革・市場整備等により魅力ある市場を構築、B起業の促進・企業の参入・退出を促す仕組み作り、等が競争力向上のために望まれると謳われている。
・消費税率を上げなければならない時は少なくともヨーロッパ並みに法人税、所得税、住民税の率を下げて、国際競争力を上げ、国民の将来に希望と安心が持てる税制を希望する。
・企業に係る税制を全般的に見直し、起業者・出資者・創業直後のアーリーステージの企業群を対象に使い勝手の良い、効果の高い支援・助成を創造して欲しい。
・一人オーナー会社課税制度の廃止は評価に値するが、役員賞与の事前届出規定は速やかに廃止して欲しい。当該規定は、これから始まる会計期間の賞与を事前に予測するもので、他の法人との公平性バランスからしてあまりにも不条理である。
(4)所得税
住民税
・諸外国と比べて所得税・住民税ともに高すぎる。特に住民税が高すぎて海外で住む方が激増し、人口の減少に拍車をかける。又、課税最低限の引き下げと最高税率の引き下げを実施して、税負担の公平化を図るべきである。
・歳入減少の厳しい経済環境下であることは承知しているが、年少扶養控除の廃止や特定扶養控除の縮小など、国民生活に圧迫を強いる税制改革は速やかに廃止して欲しい。
(5)相続税 ・中小企業の事業は雇用を生み社会性がある。その事業承継は遺産相続とは別のものとして税率と納税方式を考えてほしい。即ち、地域経済の柱であり、雇用の大半を支える中小企業に対する支援は重要で、特に、事業承継を支援し、中小企業の安定的な活動を支えて欲しい。
(6)租税特約/その他 ・わが国においても、貯蓄から投資への移行が囁かれる時代となっている。米国サブプライムローン危機により、投資マネーのクレジットクランチが生じつつある中、わが国にオイルマネーに代表される投資マネーを引き寄せることは喫緊の課題ともいえる。平成18年11月から開始しているUAE政府及びクウェート政府との間の租税条約の早期締結を切望する。
執行 ・世の中のIT化が進み、『e-TAX』も普及するはずであり、早期普及のための税務上インセンティブも従来以上に求められる。
・また、e-TAXによる自主申告を促進させるに当たり、税制の簡素化が必要である。
・更に一歩進めて、国民背番号制も検討課題としてはどうか。毎年、1兆円弱の新規滞納が生じている現状を鑑み、徴税の適正化を図って欲しい。
・国民背番号制によって、国だけではなく地方も年金、社会保障も含めたワンストップ対応が実現できれば、その副次的効果として、社保庁の入力ミスなどのオペレーショナルリスクも回避でき、業務・人件費の効率化は計り知れない。縦割り行政も改める必要がある。